OKY、お前が来てやってみろ!全世界の駐在員の叫び。まずは話を聞こう。
「お前が来てやってみろ!」
グローバルビジネスに身を置いてきたあなたなら、この言葉を言いたくなったことが、一度や二度、必ずあるでしょう。
「お前が来てやってみろ!」
略して、OKY (おまえが きて やってみろ) なんて呼ぶ人も。
日本企業の駐在員として海外のマネジメントをしていると、文化の違いやビジネスの進め方の違いから、多くの苦労をするものです。
しかし、日本の本社からは毎日のように、あれやこれやと注文がついてきます。
それらの注文や指示が、現地事情を汲んだものであればまだしも、日本の文化や都合しか考えていないなんてことも。
言っていることは分かるけれど、ここは日本じゃない、海外ですよ?
それを理解しようとせずに言いたい放題言わないでほしい。
そこまで言うなら、お前が来てやってみろ!
相手が日本本社の社長や役員クラスであったとしても、そう言いたくなるほどに、海外ビジネスの進め方は日本のものとは大きく異なります。
リーマンショック不況でOKY!
私が海外駐在員としてアメリカで働いていた頃、リーマンショックが起きました。
2008年から2009年にかけてのことです。
ウォール街で金融市場が破綻し、株式相場の大暴落が毎日のようにニュースになっていました。
もう本当に、どこまで下がり続けていくのか!?と、みんなが毎日ニュースを眺め続けていました。
大不況のせいで、住宅市場は大暴落。レイオフで仕事を失う人も続出です。
消費者たちが財布のヒモをキツくし始めたので、アメリカ最大の産業のひとつである自動車が売れません。
自動車が売れないから、自動車会社の業績が悪くなり、さらにレイオフが続きます。
見かねた政府が、中古車の下取りに補助金を出してまで自動車業界を支えようとしたので、至るところの自動車ディーラーには錆びついたポンコツ車が山積みになっていて異様な光景でした。
その中、私が働いていたアメリカ現地の職場も大惨事。
当時、同じ時期に駐在員として赴任していた上司や先輩も大変なご苦労をされていましたが、私も一緒になって、その状況をなんとか乗り越えようと必死に働いていました。
それでも、その苦労を知ってか知らずか、日本の本社からは毎日のように厳しい指示(そしてたまにトンチンカン…)が飛んできます。
するとなんだか、電話口の向こうから好き勝手言われているだけのように感じて来ました。
当時の若かりし私もだんだんとイライラがつのってきて、思わずあの言葉が口をついて出そうになります。
「そこまで言うなら、お前が来てやってみろ!」
言いそうになった瞬間に、察した上司から制止されました。
「テツの気持ちは分かる。」
「ただ、相手に理解してほしいと望むなら、まずはあなたが相手を理解する努力をしなさい。」と。
私は「うむむ…」と唸ることしかできませんでした。
業界や時代を問わず、OKYが続いている
このOKY、同じようなことが、業界を問わず、時代を問わず、繰り返されています。
今でこそよく耳にするキーワードと思うかもしれませんが、1970年代のJALをモデルにした小説「沈まぬ太陽」でも、日本の本社役員が海外拠点の事情についてよく理解をしていない、理解をしようとすらしない様子が描写されています。
そして、現地駐在員たちのフラストレーションがつのっていき、愚痴をこぼし合うのです。
「日本の本社は、海外現地のことなんて何も分かっていやしない。」と。
どんな業界でも、どの時代でも、海外拠点のマネジメントは一筋縄にはいきませんし、その難しさは日本の本社からは理解しようにもできないものです。
あなたのマネジメントは?
あなたは経営者として、管理職として、海外拠点をどのようにマネジメントしていますか?
一度でも海外勤務をしたことがある場合は、現地事情に対して想像力を働かせていることと思います。
しかし、もしあなたに海外勤務の経験がなく、現地事情をなかなか理解できない場合、どうされていますか?
まずは話を聞きましょう
海外拠点のマネジメントにおいては、日本のやり方そのままは通用しません。断言できます。
そんな時、まずは現地メンバーの話を聞いてください。
今の状況、今後の目標、乗り越えたい課題。
そして、現地の生活事情、その中での苦労も含めて。
日本の常識からは想像できないようなことが、現地では当たり前に起きています。
そして、積極的に聞いていくことで、相手側もこちらのメッセージに耳を傾けてくれるようになります。
もう一度言います。
まずは聞いてあげてください。
すると相手は安心し、エネルギーが湧いてきて、よりパワフルに現地チームをリードしてくれます。
そして、あなたの話も聞いてくれるようになります。
「お前が来てやってみろ!」なんて言葉が聞こえてくることはなくなるでしょう。