【実体験】私が経営者として試行錯誤した全社コミュニケーション実例と失敗からの学び
こんにちは、西原哲夫です。
どんな業種や業界であっても、多くの経営者や管理職がもっている悩みの種があります。
それは、部下や社員とのコミュニケーションです。
部下の数が少なければまだしも、その数が増えれば増えるほど、一人ずつと話している時間はなくなり、全社員を対象とした全社コミュニケーションを行うことが必要になります。
しかしこの全社コミュニケーションを効果的に行うことは非常に難易度が高いものです。
私もフォーチュン500の外資系企業2社を経営していましたが、全社コミュニケーションでは試行錯誤を重ね、何度も失敗を重ねました。
ただそれでもようやく手にできた学びがありますので、紹介します。
その学びとは、「話す」だけでなく「聴く」ことが大事であるということです。
ひたすら「話す」ことに努力を重ねた日々
私が勤めていた会社では、四半期ごとに全社コミュニケーションミーティングを行うことを基本としていました。
複数の拠点にまたがる社員たちを同じ時間に集め、電話システムやオンライン会議などを活用してライブで行っていました。
録画や文章でもメッセージは伝わりますが、リーダーが自分の言葉で全社員に語りかけることが最重要と考え、ライブで行うことに強いこだわりをもっていました。
このリーダーの熱意を伝えるということは、どの会社でも必要なことと思います。
そして、この全社コミュニケーションミーティングを行う中で、私がとくに汗をかいて取り組んだことがありますので紹介します。
伝える内容
まず、年間プランとして、どのようなメッセージをどのような形で伝えるべきか、何度も何度も考えました。
毎回の内容に必ず入れていたのが、売上利益や資本効率といった業績トレンドです。
会社はビジネスですし、その数値結果が社員個々人の査定やボーナスにも影響するわけですから、業績トレンドについては必ずタイムリーに共有するようにしていました。
透明性を持たせ、従業員全員で同じ情報を共有して主体性を引き出すことを重視したのです。
また、サクセスストーリー(成功事例)として、社員たちの具体的な貢献事例も数多く盛り込みました。
お客さまから感謝された事例、チームワークやコラボレーションなどが発揮された事例などを積極的に紹介し、社員たちをヒーロー・ヒロインとして大きく称えました。
これは社員たちにとって、自分が全員の前でほめられる経験になるので、前のめりで聞いてくれていました。
話し方の練習
話し方についても、練習に練習を重ねました。
プレゼンテーションの練習として、日本語でも英語でも、どれだけの場数を踏んだか、数えることなどできないほど繰り返しました。
「あー」や「えー」などと言わないように訓練もしました。
理解のしやすさを高める
他にも、聞き手にとって理解しやすくなるよう、工夫を続けました。
たとえば、会社のビジョン・ミッション・パーパス(事業目的)・バリュー(価値観)などにひもづけてストーリーを展開しました。
また、Why?(真の目的)に訴えかけながら話すことにも取り組みました。
いたずらに時間が長引き冗長になることも避け、持ち時間が1時間であれば、時間ぴったりにおさまるように周到に準備を重ねて臨みました。
全社コミュニケーションミーティング以外の場づくり
これらに加え、社員とのコミュニケーションという点で、全社コミュニケーションミーティング以外の場づくりにも積極的に取り組みました。
タウンホールミーティングのようにグループでの対話の場を作ったり、カジュアル面談としてプレッシャーの感じない雰囲気の1on1も企画したりしました。
とにかく、ありとあらゆる方法で、自分のビジョンや想いを「話す」ことに徹底的に努力を重ねていたのです。
社員からのフィードバックで得た重大な気づき
しかし、どれほど自分では努力を重ねているつもりでも、現実は厳しいものでした。
社員からのフィードバックに学んだこと
私が勤めていた会社では、「社員エンゲージメントサーベイ」や「従業員意識調査」と呼ばれる、社員アンケートが定期的に行われていました。
その内容は、会社での働きやすさなどについて各方面からの質問で成り立っているのですが、最も重要な質問事項のひとつが、「あなたが所属する組織のリーダーについて」というものでした。
つまり、その質問を通じて、社員たちがリーダーである私に対して自由にフィードバックができる機会になっていたのです。
そして、私のコミュニケーションに対して書かれていたことは、
「話が長い」
「話が短い」
「内容が表面的すぎる」
「内容が細かすぎる」
など、さまざまでした。
「相反するような内容のフィードバックが並んでいるな。」と首をかしげながら読んでいたのですが、ひとつ、非常によく分かったことがありました。
それは、
「私のコミュニケーションではうまくいっていない」
ということです。
その後も、よりロジカルで論理的に話をしたり、より情熱的に訴えかけるようにしたりしましたが、やれどもやれども、社員たちから私のコミュニケーションに対してもらうフィードバックは、一向に好転しません。
コーチングスキルを学んで気づいたこと
自分としては、心の底から努力をしているつもりでしたので、「なんで自分の話は伝わらないんだ・・・」と、本当に落ち込む日々が続きました。
大変な思いをしてアメリカのトップスクールからMBAを取得したし、ビジネス書も大量に読み漁り、あらゆる勉強もしていました。
それでもどうにもならない状況で途方に暮れていたところ、ふと、コーチングを本格的に学んでみようと思い立ちました。
実はMBAの時にもコーチングの授業を受けたことがあり、その内容を気に入っていました。
しかしそれまでずっと、ロジックやデータが最も重要なことだと信じていたので、正直、数値で測定しきれないコーチングの効果については半信半疑だったのです。
しかし後がない状況だったので、ワラをもつかむ思いで、コーチングスキルを本格的に学ぶことにしました。
コーチングスキルのトレーニングから得た学び
日本で最初にコーチングスキルトレーニングを展開し、上場企業として信頼あるサービスを提供している、コーチ・エィ社のプログラムに申し込みました。
プログラムの目的は、コーチング型マネジメントのスキルを身につける、というもの。
そのトレーニングプログラムを通じて、ありとあらゆる角度からコーチング型マネジメントに求められる「聴くスキル」を練習し、さらに、自分にもコーチがついて「聴いてもらえる経験」を体験します。
それを何度も何度も繰り返していくのですが、数ヶ月が経過したころ、ドカン!と、イナズマが走るような気づきを手にしました。
それは、
「自分はこれまで、ぜんぜん人の話を聞いていなかった!」
というもの。
なんとシンプルな気づきであることか!
振り返れば、自分の話ししかしていなかった
その大変シンプルな気づきを得てから、今までの自分を振り返ると、自分の話しかせず、相手の話にほとんど耳を傾けてこなかったことに気がつきました。
すると、サーッと、背中に冷たいものを感じたほどです。
思えば、外国人としてアメリカで働いていた期間が長かったせいか、どのような場面でも自己アピールと自己主張をすることに必死でした。
会議の場でも、1対1の場でも、どれだけロジカルで自信たっぷりに自分の考えを話すことができるかということを重視していたのです。
それをしないと、自分の価値が認められないのではないかという恐怖や焦りを感じていたためです。
また、経営の仕事を始めてからも、スピード感をもって決断をし続けることに責任を感じていたので、社員たちの話をろくに聞かず、自分ひとりでどんどんと決断をし、それを伝え指示する、ということを経営スタイルとしていました。
当時の社員たちからすれば、「西原がまた勝手なことを言ってるよ。。」という冷めた感覚を持っていたかもしれません。
聴くことを始めたら世界が変わった
そこで、私はそれまでの一方的に話すスタイルを改め、部下や社員とのコミュニケーションにおいて、「相手の話を聴く」ということを取り入れるようになりました。
最初の頃は私の聴き方がぎこちなく、相手の顔色が曇り、表情が困惑していることが多くありました。(当時の方々、本当にすみません。。。)
しかし、聴くということを続けていると、少しずつ慣れてきましたし、楽しくなってきました。
また、相手の話を聴いていると、その面白さにも気づき、不思議と自分の口から次々に質問が出てきます。
相手に興味・関心をもって質問をするので、相手の方もそれを嬉しく感じるのでしょう。
とてもイキイキとした表情になり、早口でビジネスに対する考えや想いを次々と披露してくれます。
そして、話し合いが終わると、なぜかやる気とエネルギーに満ち溢れ、「挑戦してきます!また報告します!」と言って元気に部屋を出ていきます。
さらには、こちらがビジョンや目標の詳細について話をしていないのに、「私たちは今、こういう方向に向かっているんですよね?」と、すでに理解している様子。
これには大変驚かされました。
要するに、こちらが相手に興味・関心をもって話を聴いているので、相手もこちらが伝えたいことを先回りして理解する努力をしてくれていたのです。
驚くとともに、マジックを見せられたような、なんとも不思議な体験が続きました。
聴くスキルを身につける第一歩として「聴いてもらう経験」を
今、部下や社員とのコミュニケーションで悩んでいる経営者や管理職の方には、ぜひ、聴くスキルを身につけることをおすすめしたいと思います。
そしてその際、トレーニングを受けることも効果的ですが、もっと簡単にできることとして、まずは誰かに自分の話を「聴いてもらう経験」をもつことから始めてみてください。
自分の話を聴いてもらうことで、「話さなきゃ!」「伝えなきゃ!」という感覚との大きな違いにも気づけるはずです。
そして、「聴いてもらう経験」をするのにもってこいなのが、コーチングです。
コーチたちは「話を聴くプロ」ですので、もしあなたの周りや知り合いにプロのコーチがいたら、ぜひ体験でも良いので申し込んでください。
夜の飲み会・懇親会で誰かに話を聞いてもらうなどとは比べ物にならない、別次元の経験を得られます。
もしプロのコーチが身近にいない場合、私でよければ体験を受け付けていますので、ご遠慮なくお問い合わせいただければと思います。
この「自分の話を聴いてもらう」というのは、できるだけ早く経験した方が良いです。
本当に世界が変わりますので、強くおすすめします。
ロジックや情熱だけで一方的にまくしたてていた当時の私がガラッと変わったように、あなたの世界にも大きな変化が訪れるでしょう。